コンケーン

恐怖を覚えながらの 東北タイ

 峻険な山道をあえぎながら登ったバスは、急カーブを曲がって突然停車した。運転手が車掌に何か指示をだし、それを受けて車掌は乗客全員を車外に誘導した。前方を見ると上の方からばらばらとこぶし大の石がおちてくるのが見受けられる。落石が止むまで走行を控えるそうだ。 当たり前やないか。

 私の横にいたおばさんも、後ろにいたおじいさんも涼風に目を細め、休憩の時間を楽しむかのようにくつろいでいる。何事も楽しさに替えるタイ人の特技である。時々前方を眺めていた運転手が乗れ!
 
 走り始めて15分も経ったか、再び停車して客に向かって降りろ! ゾロゾロと指示にしたがう哀れな乗客の群れ。 今度は落石ではなく、道路の崩壊である。道路の左側が半分ほど崩れ落ちて、その上に丸太と板が乗せてある。

 車掌が先導して乗客数名ずつが怖々歩いて渡って行くのだ。全部渡った後、運転手だけ乗ったバスが徐行しながら進んでくる。ここでバスが落ちれば、運転手は重傷、我々乗客は野宿である。
 
  この山越えもバスは無事に通過することが出来たが、なんとも危険な道路であった。
日本なら当然、長期の通行禁止であろう。 人命があまり重視されていないタイのひとこまを垣間みた。

  それにしても、北タイから東北タイへバスで移動することがこんな危難なら、間違っても友人などを誘うことは出来ない。これが雨季であれば当然長期間の運休になるだろう。   

 やっと山岳地帯から下界へ降りてきたのは、午後6時30分頃であたりは夕闇が支配し始めていた。その後もバスはけなげにも走り続けて、コンケーンのバスターミナルにたどり着いたのが、夜の帳も完全に降りた午後8時になっていた。 
所要時間8時間にわたる、バスでの山越えは、老人にはチトきつすぎる一日であった。

 さて、これからが暗い夜道のホテル探しである。コンケーンは比較的ホテルの多い町なので、明日の行動を考えて、エアコンバスのターミナルにほど近い 「ケーンインホテル」 に飛び込みで、一夜の宿を得た。

 コンケーンのホテルにチェックインして、遅い夕食をとるためにまだ人の動きが見られるバスターミナル近くの食堂へ入った。私の座る場所はあるだろうかと見回していると、小学校3年くらいの女の子がさっと近づき、手早くテーブルと椅子を用意してくれた。

 焼きめしとおかず二品、ビールを注文したら、女の子はすぐに氷を入れたコップと、よく冷えたビールを運んできて、手際よくコップについでくれる。 なんと!

 今夜の食事はことのほかうまい。いつもよりビールもはかどる。それにしても良く動く女の子だ。客への食事のお運び、後かたづけ、お金の受け渡しまで一人でこなしている。

 聞いてみるとやはり小学校3年生であった。思わず隣の席の中国系の男性と顔を見合わせた。 彼も同じ思いであったに違いない。

 奥からおばあさんが箒を持って出てくると、その箒をにっこり笑顔で受け取り黙々と床を掃き出した。 おばあさんの仕事をとるな。食事中にホコリをたてるな。など云う気はさらさらおこらず、感心するばかりであった。

 食事が終わり、お勘定はいくらというと、少女は即座に 215バーツと頭の中で計算していたであろう金額を答えた。 えらい!                   

 わずかのチップを渡すと小さな手を合わせて、ありがとうとかわいい。表で調理を担当している母親と共に手を合わせて、見送ってくれた少女、爽やかな気持ちをプレゼントしてくれてありがとう。

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