故郷

故郷の思いで

 日本三景の一つとして有名な天橋立は京都府にある。これは日本海と阿蘇海とよばれる内海がせめぎ合って、長い砂州を作った地形である。

 天橋立からディーゼル列車で西へ1時間ほど行ったところに 、同じような地形が見られる所がある。ここが私の故郷である。

 ここも日本海と久美浜湾に挟まれて出来た地形で、この砂州は天橋立よりやや小さいので湊小天橋と呼ばれ、夏はリゾート地として、秋から冬にかけてはカニと牡蠣を食べに来る客で賑わっている。

 この集落の中央付近の内海側に我が家はあって、昔は家の庭が海と接していた。手漕ぎの和船が引き上げられる庭端には、小さな竹がこんもり茂り海から帰る目印の役目を果たしてくれていた。

 竹藪には棕櫚の木と銀杏の木が主人面して生えていて、絶好の風避けであった。ところが生命力の強い竹が、よその敷地にまで根を張るようになって管理が難しくなり、可哀想だがブルドーザーを入れて根こそぎ竹退治をした。

 そして残ったのが、樹齢100年にはなる1本の銀杏の大木であった。何十年も実を付けたこともなかったので、雄の木に違いないと思っていたのだが、3年前に突然実をつけた。それ以降は樹勢が次第に弱まり葉もつけなくなって、ついに2年前、風の強い日に横倒しになって寿命を終えた。 そして父親も銀杏と同じように翌年100年の寿命を終えた。

 私が勤務していた嵯峨や嵐山で一斉に、竹の花が咲いたことがあった。花を咲かせた竹は翌年すべて枯れてしまった。この場合は花が咲かなかった竹が、根を大きく張って数年で竹の林は旧に復した。

 銀杏と竹だけではなく、他の植物でも最後は花や実をつけるのだろうか。と不思議に思ったが、我が家の銀杏の枯死には他に原因があったようだ。

 それは海面の上昇である。畑を50㎝も掘れば水が出てくる、海は10メートルも離れていないので、畑の下に染みこみ進入する水は塩分が非常に濃い。大根の下の部分が塩害を受けて、無くなっていたりもする。このような海面上昇が近年少しずつ進行しているように思われる。

 タヒチではないが、海面がこれ以上に上昇しないように願っている。中華街で銀杏を見た帰りに、こんな事をふと思い出したので、旅とは無縁ながら書いてみた。

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